#1 予期せぬ来客

日陰に入ると少し肌寒さを感じる6月のある日。世間は新型コロナウィルスという未知の脅威が世界中を恐怖で支配している。

小学生向けのプログラミング教育の事業の運営も小学校の相次ぐ休校や世の中の自粛でどうしようとすることもできない。今日は13時半から銀行との融資についての商談がある。

そのため徹夜で説明資料を作成していたので資料を常務と確認の電話をしている時のことだった。

「ガチャ・・ガチャ・・・・ガチャガチャ・・・・」

玄関から音がする。なんだろう。同じマンションの住人が部屋でも間違ってドアを開けようとしているのか?それにしても乱暴な人だな。

「内川常務、玄関から物音がする。電話中に申し訳ないが見てくるから待っていてほしい。」

リギングから玄関までそっと移動し、覗き窓から玄関の外を見た。すると髪の短い男性と後ろに2名男性が立っていて、その隣に女性が1名いるのが見えた。全員運動着のような軽装だ。

「この人達は住民じゃない。誰だかわからないが家の鍵を開けようとしている」

そして次の瞬間ガチャリと鍵が開き、勢いよくあいたドアから髪の短い男性が家に入ってた。次々と後ろに立っていた男性と女性が玄関をふさぐように立っている。

「何の用ですか?勝手に家の鍵を開けて何をしようとしてるんですか?警察呼びますよ。出て行ってください。」

すると髪の短い男性が信じられない言葉を口にした。

「四田警察だ。お前は石嶋だな。今から家の中を捜査するからそこを動くな。」

言葉の意味が理解できなかった。

「はい?捜査?何の捜査ですか?本当に警察なんですよね?まず何の捜査なのかを伝えてほしいし、手帳を見せてほしい。」

とあまりの予期せぬ出来事に事態が呑み込めないでいた。すると髪の短い男性は慌てだし、玄関の外に下がっていった。次に後ろの二名は警察手帳を見せてきた。そして女性も警察手帳を見せてきた。どうすればいいのか判断できずに必死に声を出した。

「さっきの髪の毛短い人、本当に警察なんですか?手帳もってないじゃないですか。おかしいですよ。手帳を持っていない人に言われても。」

「私は半田の上司の上原だが、彼も警察官だ。私が証明するから」

「はあ、それで何をしにきたんですか?」

すると手帳を忘れた全田刑事が私の目を見てこう言い放った。

「ここに違法なものがないのか家宅捜索を今から行う。そこに動かず立っていろ。」

やたらと高圧的な態度でこの頭ごなしな感じの悪さ。こっちはこれから会社の未来にかかわる重要な商談があと1時間後に迫っているというのに。

「あ。そうですか・。じゃあ見たらいいんじゃないですか?弁護士の先生に連絡しますから」

こういってリビングに歩いていこうとした瞬間に2名が行く手を遮るように立ってこういってきた。

「強制捜査だから、弁護士への連絡はできない。おとなしくそこに立っていろ。何も触るなよ。」

「今から重要な商談があるのですが、何分待っていればいいんですか。本当に迷惑ですけど。」

全く話を聞くそぶりもなく、その直後、男性たちは家の中に入り、女性一名は玄関を見張っている。

一体何が起こってるんだ。税金払ったはずだし。すぐに終わるだろう。ここまでの出来事で喉が渇いた水が飲みたくなり、玄関にいる女性に声をかけた。

「喉が渇いたから飲み物を取りにいってもいいですか?今から仕事で商談があるので終わる目安は何分後ですか?」

「何も言わず、大人しくたっていてください。」

何度聞いても同じことしか言わないし。もう本当に困った。リビングの方を見ると引き出しを開けたり、バッグを開けたりしている。

僕はリビングに戻って際に髪の短い男性が持参したファイルを見ているようだったので声をかけた。

「まだ終わらないですか?何もないでしょう。さっさと帰ってくださいよ。」

「石嶋さん、これは裁判所の命令で家宅捜査してるのです。何もできませんよ。」

ダメだ。。話にならない。すると彼上司と名乗る上原が声を上げた。

「あった。あった。」

すると先ほどのファイルから紙を取り出して渡してきた。

「強制家宅捜索令状と書いてあった。何があったんですか。見せてくださいよ。身に覚えがない。」

すると一人がのようなものを取り出して、こういった。

「ここにあなたの家から見つかった大麻と思われるものが入っている。時間が経つと紫になる。そうなったら大麻ということになる。」

「ことになるっていってもなるわけない。そもそもいきなり瓶を見せてきて、この中に大麻が入っているといわれても納得できない。物もみてないですけど」

全くいうこと聞いてないし

「この大麻は君のもので間違いないな?」

「いや間違いでしかありませんが。」

今から逮捕をするから手を出せ。

一体、この後どうなるんですか。何か持っていく必要はありますか?

「特に何もいらない。」

「じゃ、家の鍵だけ持っていきます。」

何かの間違いだ。とにかく一度警察署に行き説明をするしかない。しかし銀行の時間がもう来てしまっているし、現状をどうにもできないのか。

融資も明日の銀行のプレゼンも、会議も全部キャンセルになってしまうのか。いつ解放されるんだろうか。不安しかない。

そして、僕は手錠をかけられ紺色の布を手錠の覆いかぶされ、前後に縄をもった警察官に挟まれるような形でマンションの外に連れていかれた。

その途中に銀行へいくはずだったため、会社の運転手が車の中でテレビを見ているのが見えた。こちらにはまったく気づいていないようだ。

そして僕は警察署に行くことになった。

つづく